こんにちは。防災コミュニティデザイナー兼ライターとして活動しているあかりです。
2026年、今年で熊本地震から10年。
私は滋賀県を拠点に、防災のハードルを下げるための活動をしています。
そんな私が今回、熊本の地に足を運んだのは、ひとつのプロジェクトに触れたかったから。
4月12日(日)、熊本森都心プラザで開催された「未来へ手渡す熊本10年」完成試写会&特別講座に、
登壇者のひとりとして参加させていただきました。
この記事では、当日の様子と、私自身が受け取った気づきをご報告します。
温かなハプニングから始まった一日
会場に集まった皆さんの表情は、穏やかで、でも少しだけ緊張感もあって。
イベントはドキュメンタリードラマの試写からスタートする予定でしたが、
冒頭、映像がなかなか流れ始めないというハプニングがありました。
でも不思議なことに、その「待ち時間」が会場をひとつにしてくれたように感じます。
スタッフの方が焦りながら対応する様子を、参加者の皆さんが温かく見守る。
「一緒にこの場を作っている」という空気が、自然と生まれていました。
10年という時間をともに振り返ろうとする人たちが集まると、こんな空気になるんだ
——そんなことを思いながら、始まりを待っていました。
「自分より大変な人がいるから」——くみっきーさんが伝えたかったこと
このプロジェクトの発起人であり、監督を務めたのが西園寺くみこさん、通称くみっきーさんです。

くみっきーさん自身が、熊本地震の被災者でした。
避難所での生活の中で、「トイレを我慢し続けた」ことが原因で自己免疫疾患を発症。
そのうえ収入もゼロになり、経済的な恐怖とも闘いながら、
それでも防災ボランティアを続けてこられました。
そのご自身の体験をもとに制作されたドキュメンタリードラマには、
これまであまり語られてこなかった「被災後の現実」がリアルに描かれています。
ドラマの中に流れていた、こんな言葉が胸に刺さりました。
「自分より大変な人がいるから、私は我慢しなきゃ」
「本当は、あの時どうすべきだったんだろう」
誰かを気遣うあまり、自分を後回しにしてしまった後悔と葛藤。
震災から10年という月日は、一人ひとりの決断と歩みの積み重ねなのだと、改めて実感しました。
地震の影響で収入ゼロという過酷な状況に直面しながらも、くみっきーさんは歩みを止めませんでした。
そんな中、ある中小企業診断士の方との出会いをきっかけに事業を再建。
どん底から這い上がり、今のくみっきーさんがいます。
「被災して終わりではない。そこからどう生きるか?」
くみっきーさんが「ご協賛」という形での応援を呼びかけているのも、
こうした自身の経験から、経済的な安定の大切さを痛感されているからこそ。
「自分の体調と向き合うこと。そして、経済を回していくこと」
この両輪が揃って初めて、人は「生きる力」を取り戻せる。
ドラマで描かれた「葛藤」の先にある、力強い「再生」の歩み。
それも含めて、私たちが未来へ手渡していくべき大切な記録なのだと感じました。
主人公を演じた「ゆかちん」さんの、震災への想い
このドラマで主人公・くみっきーさんの役を演じられたのが、
神戸からいらっしゃった「ゆかちん」こと土居有香(どい ゆか)さんです。

土居さんは、1995年の阪神淡路大震災のときは当時高校生だったとのこと。
今回、ドラマの中でくみっきーさんの役を演じるにあたり、
ご自身が親の立場となった今、「あの地震のとき、子供をどう守りながら生活していくのか」ということを、
ものすごく深く考えられたそうです。
「親として、子を守る」
その覚悟と葛藤を込めて演じられた土居さんのお話は、深く心に残りました。
震災の記憶は、こうして次の世代へ、そして異なる地域へと「想い」として手渡されていくのだと、
改めて感じた瞬間でした。
知ること、正しく恐れること、そして社会全体で守ること
当日は、共に登壇された上野ひさこさんから、災害時の性被害についてのお話もありました。

私が最も大きな衝撃を受けたのは——
避難所という場所において、男女関係なく、子どもから大人までが性被害の対象になり得るという事実です。
上野さんが教えてくださった、大切な3つのこと。
① まず、知って意識し、自分を守ること
現実を知り、正しく恐れて対策をすること。
② 社会全体で「許さない空気」を作ること
加害者を生まず、被害を放置しない社会の目を持つこと。
③ 周りの人を守ること
個人だけの問題にせず、コミュニティ全体で守る意識を持つこと。
なかなか表に出づらいけれど、決して目を背けてはいけない現実がある。
知ることが、自分や大切な人を守るための第一歩なのだと、強く感じました。
心を守る備えを
この日、私も「今日から始める私と家族の防災」というテーマで講座を担当させていただきました。

「防災」と聞くと、「あれもしなきゃ、これも準備しなきゃ」とハードルが高くなりがちです。
でも、まずは「自分にできるところから」でいい。
私が特にお伝えしたかったのは、心を守るための備えの大切さ。
好きな香りのアイテムを持っておく
お気に入りのお菓子を忍ばせておく
そんな、日常の延長線上にある「好き」が、有事のときに自分を支えてくれます。
少し早口になってしまったのが反省点でしたが、会場の皆さんが温かく頷いてくださり、
質問もいただけたことが、本当に嬉しかったです。
熊本の地で受け取ったもの
この日、一日を通じて私の中に刻まれたメッセージがあります。
「揺れている時間はわずか。けれど、その後の生活は、ずっと、ずっと長く続いていく」
私たちはどうしても「揺れ」そのものに目が向きがちです。
でも、本当の困難は、揺れが止まった後の長い被災生活の中にある。
だからこそ、体だけでなく心の備えを。
誰かのためにと動く人ほど、まず自分が健やかでいることを。
熊本の皆さんの10年の歩みから、それを改めて教えていただきました。
くみっきーさんをはじめ、プロジェクトに関わるすべての皆様、そして会場に足を運んでくださった皆様、
本当にありがとうございました。✨
